2025.05.07 更新
ネタバレさせない前提でまとめてみよう。
仲良しの女性3人は、姉妹かと思ったらそうではなく、小さい頃から何か理由があって一緒に住んでいるらしい。都心のおしゃれなエリアに近いところにある一軒家だろうか。街に近そうなのに、うっそうとした緑の奥にある古い建物のようだ。みんな二十歳前後かなというエピソードが、それぞれのキラキラした表情と一緒に進んでいく。
そのエピソードが、だんだん見ている側に違和感として伝わってきて、そうか、そんな設定だったのかと胸が締め付けられると共に、3人の思惑が、どのように進んでいくのか引き込まれていく。
ゆうか(杉咲花)は、大学で素粒子や量子力学の勉強をしている。二十歳になったばかりでしっかり者のさくら(清原果耶)は、水族館でアルバイトをしているようだ。みさき(広瀬すず)は、OLをしていて、キーボードで何か入力をしている。そして3人の長女的な立場に見える。
みさきが気になっている男性、高杉(横浜流星)はバスで乗り合わせる人だ。映画のタイトルから、みさきの片思いが軸になって話が進んでいくのかと思いきや、恋の話ということではなく、3人のそれぞれの片思いが交錯しながら、彼女たちが一緒に過ごしてきた12年間や、そのきっかけに繋がる事件、そしてこれからの3人のことなどが綴られていく。
小学時代のコーラス仲間だった3人が一緒に暮らすことになり、毎日ご飯を作り、おしゃれをしたりお互いや外の世界を思い遣ったりしながらの生活が、観る側の心にダイレクトに響いてくる。
高杉も実はコーラス時代の仲間で、ピアノ奏者であり、12歳のみさきに音楽の楽しみ方のきっかけとして、音楽劇の脚本を書くことを勧めた人だった。事件後にピアノから離れてしまった高杉は、コーラスを指導する先生からのピアノ演奏依頼を断るのだが、偶然にみさきが残した脚本のノートを見つけ、そこからピアノに向き合おうとする。そして、合唱コンクールのピアノ伴奏を引き受けることになる。そしてみさき達、3人も舞台で一緒に合唱するのだった。
事件の犯人とゆうかの母とのやりとりや、ラジオ番組からの秘密めいた情報に賭ける3人、住まいから引っ越すことになり次の場所に旅立つ3人。片思いはそれぞれ形を変えて、明るい未来が見えるような魔法でも起こりそうな話だった。
映画の事前情報を持たないまま映画館に足を運んだが、この映画はその方が楽しめそうな気がする。でも全体の設定を知ってから2回目に観たとしても、魅力的な出演者たちを再度見直しながら、物語の奥深さを味わうことができそうだ。ストリートミュージシャンとしてムーンライダーズが出ていたり、ラジオのパーソナリティとして声だけで登場するのが松田龍平だったりと、あちこちに散らばる豪華さにも驚かされる。脚本が坂本裕二ということだけでも、観たくなる映画である。
2025.5.2(M)