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2026.01.19 更新

介護未満の父に起きたこと

『見えない死神 原発不明がん、百六十日の記録』 東 えりか 著

ジェーン・スー 著

新潮新書 2025

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どこの家庭にも起こり得るし、いずれ自分の身にも起こるであろう介護のことは、正直な気持ちとして、その時になるまであまり考えたくない話だ、少なくとも自分にとってはそうだ。しかし人は突然介護の対象になるわけではなく、その前の弱っていく過程がある。それは「加齢」という言葉で表現できるかもしれないし、病気や怪我や事故でも介護の近くに寄ってしまうこともある。
ジェーン・スーさんのお父様は、著作が出た2025年8月には87歳で、昨年末に88歳を迎えたことを彼女のSNSで知っている。お年は召しているが、お元気そうな様子だ。

59歳で妻を亡くし、その後はスーさんではない周囲の人々に手伝ってもらいながらも20年ちょっとを元気に過ごされて来たお父様について、スーさんの手伝いが必要になってきた82歳の頃からの5年間を綴ったのが本書である。まだ介護対象ではないけれど、できないことが急速に増えていき、かつ娘であるスーさんがどのように対策を考え進めていくか、迷いや対処も含めて共感できることがたっぷりだ。この時期はコロナ禍とも重なり、不穏な空気が漂い、着地点が見えなく正解もわからない時期の不安も伝わってくる。
読んでいる共感の中で大きいのは、自分と親は別人格だとしっかり割り切って対処しているところだ。これができないと「何でわかってくれないのか」とか「うひゃ〜!!耐えられない!」っていう気持ちに押しつぶされることになるはずだ。そして安心して読めるのは、介護未満という時期のせいもあるだろう。それなりに健康を保てて、周囲がうまくサポートできれば80代後半でもお父様のように過ごせるんだなという参考にもなる。
これは村井理子さんの『義父母の介護』とセットで読みたい。村井さんの義父母は、現在は別々のグループホームに入っていて、まだ介護は進行中だが、これまた参考になりそうな話満載である。

自分にもスーさんのような親孝行の娘がいたらなお良いのだけれど。

 

2026.1.17(M)

星評価 3.9
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