高齢のひとり暮らしは、男女問わず大変になるのは予想できる。身体機能が落ちてきて、病気も心配だが転倒などでの怪我も場合によっては致命的なダメージに繋がる。
家族や年上の親しい友人達、そして自分も平等に歳を重ねてきて考えるに、老後は自分にとって穏やかな戦いみたいなイメージが出来上がっている。そんなこともあるせいか、この所は親の介護についての書籍や、本書のようなテーマについ手が伸びてしまう。
しかし、読んでみて意外と言ったら失礼なのだが、阿刀田さんはご高齢にも関わらず、いい感じで気楽さと自由を謳歌している様子が綴られていく。本書の帯にもあるのが「今日もまあまあ。それでいい」というのだ。
当たり前のことなのだが、興味や過去の経験が、高齢になってもその人を支えていくというのを阿刀田さんのエッセイを読むと重い実感として受け止めることができる。古典への造形や、様々なことに対する考え方、老いや生に対する向き合い方などが押し付けがましいところがない。こんな老人はかっこいいなあ。つまり、今をどう過ごしていくかが重要なんだと、当然のことを教えてくれる。
阿刀田さんは、88歳の時に奥様が介護施設に入り、ひとり暮らしが始まったようだ。そして、本書が刊行された昨年に、その奥様が他界され本当にひとりになった。それについては、プロローグまで明らかにせず、軽妙で淡々としたエッセイが続いている。そして、奥様のことを記された文章でどれだけの感謝や寂しさが詰まっているか、胸にずしんと来るのであった。
私にとっての阿刀田高さんは、新潮文庫の『ギリシア神話を知っていますか』や『旧約聖書を知っていますか』の著者だ。あらためて過去の著作のリストを見ると手に取っていない面白そうな本がいっぱいだなあと思うのだった。様々な新刊書を読むのに追いつかず、つい積読が増えるのが常だが、今回のエッセイ集を読んで、過去の後宇田さんの著作も読んでみたいと思った読者は私以外にも沢山いるだろうな。
2026.2.22(M)






