早見和真 著
ハルキ文庫 2021
書店での仕事を通して繰り広げられる悲喜交々の小説かなあと予想して手に取ったら、こりゃなんだ?!
物語の舞台は、吉祥寺にある中規模の書店というだけで、一気に親近感が最大級に近くなる。そして主人公の谷原京子は28歳の契約社員とのことで、そんな感じのスタッフさんって書店にいるよなあ、ふむふむと更に親近感が上乗せされる。谷原さんの視点から見る山本店長の出来の悪さに同情をしつつ、でも店長だからきっと良いところもあるんじゃないかと思いつつ、ページをめくっていく。
書店で働くのは収入として大変だという話は他でも読んだことがあるが、きっと本当に大変なんだろうなあ。そして本は重いから体力的にも重労働に違いないだろう。そんな中で、毎日のように「辞めてやる!」と思いながらも本から離れられない谷原さんの気持ちの揺れは、とてもわかるような気がする。
谷原さんの書籍愛も良いけど、ご実家が神楽坂で居酒屋という設定も妙に羨ましい。予想通りに、いざとなったらというか財布が寂しい時にはオヤジさんの店で飲み食いするというのがしばしば起こる。
特筆すべきは、はっきり言って登場女性の素敵度が非常に高く、一方でこの世界に素敵な男性は居ないのか、と同情したくなるほど素敵女性と釣り合わないのだ。
だからと言って良いのか、オヤジさんの神楽坂の店には、妙齢の素敵女性がひとりで飲みにくる。谷原さんの周囲には、素敵女性が集まる何かがあるのか。そしてどうも素敵女性は酒飲みとしても登場するのが笑えるし嬉しい。
終盤になって来るとバカすぎると思っていた店長も、少しは良いところもあるのは見えてきたけど、やっぱりねえ気の毒なことになるのでした。
思い出や淡い恋や、仕事の大変さやミステリーが軽やかなタッチで進行する小説でした。続編もあるので続けて読みたくなる。
映画化が決定したけれど、まだキャストの情報が出ていないので、妄想できるのも今の楽しみです。
そしてできることなら、神楽坂のオヤジさんのお店で飲みたい。
2026.11.4(M)






