だいたい吉祥寺に住まう

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2026.01.21 更新

楽園的甘いもの[2]

 これは⋯⋯やみつきになる。私は何個もは食べられないが、甘いものが好きなひとにとっては、楽園的お菓子ではあるまいか。ぜひ手土産にしたいと思ったのだが、つぎに行ったときには、特設販売のブースは煙のように消え失せていた。砂漠で見たオアシスの幻覚!? 調べてみたら、そのとき食べたトルコのお菓子店(ナーディル・ギュル)は、日本でオンライン販売もしているようなので、気になったかたは召しあがってみてください。おや、松屋銀座にもお店があるようだな。今度行ってみよう。

 どうしても洋菓子か和菓子かという選択になりがちだが、中東のお菓子もいろいろ食べてみたいなと思ったのだった。バクラヴァから推測するに、たぶんどれも極めて甘いのだろうけれど、洗練されていておいしそうだ。さすが、豊かな文化と長い歴史のある土地のお菓子である。ラマダン明けに、こういう甘いお菓子をみんなで食べるのかなと想像するのだが、とにかく中東の暮らしをなにも知らないので、想像はあくまでもぼんやりとしたものにしかならない。中東関係の本ももっと読んでみようと、お菓子から少しずつ世界が広がるのだった。

 甘いものは、まだ見ぬ土地への興味をかきたててくれるし、ひととひとをつなぐ役割も果たしてくれるなあと感じる。いや、本来は甘いものにかぎらず、食に関するもの全般が、未知への好奇心をかきたて、人々をつなぐ力を持っているのだろう。だが、いかんせん、しょっぱいものや酸っぱいものは、手土産になる率が低い。手土産の王道たる甘いものを糸口に、「ほほう、地元の銘菓なんですか。こりゃありがたい」などと会話が弾む。

 なぜ、「手土産=甘いもの」となりがちなのかといえば、やはりパッケージや本体のかわいさが理由なのかなと思う。日持ちという点では、「しょっぱ」や「酸っぱ」でも大丈夫なはずだし。私は塩辛の無骨な瓶詰めをいただいても、もちろんうれしいです。

 甘辛両方いけるうえに、酒も好き。糖尿と高血圧にほんとに注意せねばならぬ。

バクラヴァ

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著者:三浦しをん(みうら・しをん)氏

1976年、東京生まれ。
2000年『格闘する者に○(まる)』でデビュー。
2006年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞、2012年『舟を編む』で本屋大賞、2015年『あの家に暮らす四人の女』で織田作之助賞、2018年『ののはな通信』で島清恋愛文学賞、2019年に河合隼雄物語賞、2019年『愛なき世界』で日本植物学会賞特別賞を受賞。
そのほかの小説に『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『天国旅行』『墨のゆらめき』『ゆびさきに魔法』など、エッセイ集に『乙女なげやり』『しんがりで寝ています』『好きになってしまいました。』など、多数の著書がある。

撮影 松蔭浩之

地中海世界の歴史8