1980年代から、ほぼ毎年ヨーロッパを中心に古代ローマの遺構に足を運んでいます。
古代ローマの足跡は非常に広範囲で残っており、現地に訪れると書物からだけでは計り知れない歴史が、実感として伝わります。
コロナ禍になってから、今の所は海外へ行けないままの数年が過ぎました。
ここでは、20年以上前のフィルムで撮影した写真や数年前の写真を織り交ぜてお見せします。
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本村凌二(Motomura Ryoji) [西洋史家 東京大学名誉教授]
2025.10.20 更新
ロンドンから日帰りでバースに向かった日、あいにく天候はすっきりしていなかった。 途中のパブで昼食をとり、博物館になっているローマン・バスを見学してから、クレッセントに向かった。 名前の通り、三日月を思わせる形状の美しい建物である。
建物前に多くの車が停まっていなければ、18世紀にタイムスリップしてしまいそうな光景である。 バースのランドマークでもあるこの場所は、集合住宅とホテルになっているようだ。 中には入らず、周囲を散策するにとどめて、ゆっくりと駅方向に向かった。 写真の空模様が物語るように、途中で雨が降ってきたのだった。
2025.09.17 更新
コロナ禍以降、自分のライフワークの執筆や体調のこともあり、毎年足を運んでいたロンドンにも行けないままだ。 そこで、最後にロンドンに行った時の写真を眺めている。
古代ローマの影響は、言うまでもなく広範囲であり、大英帝国にも数多くのローマが残っている。 ロンドンから、電車で日帰りできる範囲にあるバース。名前でも想像つくように温泉が出ている。ローマ浴場跡の一帯は世界文化遺産にも登録されており、イギリスでも有数の観光地である。
写真は、現在は博物館になっているローマン・バスである。この他、屋内にも風呂や施設が残っている。 ここで、大昔はラテン語が飛び交っていたのだろうなあ、などと想像するのであった。
2025.05.07 更新
インスタグラムのアカウントでは、このところチュニジアの写真を公開している。
北アフリカにあるチュニジアは、ローマ史を研究してきた自分にとって、重要で魅力あふれる場所である。
2009年のこと、東京大学に所属している教え子たちと行ったこの地で、旅程の前半に足を骨折してしまい、病院に入院した。
まさかの、うっかりした怪我である。
心細いやら情けないやら、当時のさまざまなことを思い出す。
現地の言葉による治療に関する説明も十分理解したとも思えないまま、その後はギブスと松葉杖で動ける範囲を回った。もちろん、同行者たちにも迷惑と心配をかけた。
モダンジャズの名曲「チュニジアの夜」を聴くと、今でもふとあの病院で不安だった記憶がよぎるのだった。


2025.02.21 更新
昨年末にテレビ朝日からの依頼で「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」という番組の監修を行った。3時間スペシャルと銘打ってポンペイ、ソンマ・ヴェスヴィアーナ、ローマの世界遺産や遺跡を巡る番組である。普段は入れない場所や、私には懐かしい場所も映像で目にすることができた。
その中で、ローマにあるピラミッド(ガイウス・ケスティウスのピラミッド)も取り上げられていた。
2010年9月に撮影した私の写真では、苔や汚れがかなり目につくが、建築から2000年以上を経て2012年から2015年に日本の会社が修復し、今では白く美しいピラミッドになっていた。番組を見て、ローマ史にも目を向けてくれる方がもっと増えたら喜ばしい。

2024.12.25 更新
初代ローマ皇帝のアウグストゥスは、皇帝になる前はオクタヴィアヌスといった。古代ローマ史に名を刻むカエサルを叔父に持ち、後継者となった彼は、平和の時代が始まる象徴のような人物である。もちろん、カエサルが他界した後の様々な戦いはあったが、いずれは戦いの時代が終わり平和な時代を統治する人間が必要だとカエサルは予想していたのごとく、知にたけたオクタヴィアヌスはその後に台頭していく。
オクタヴィアヌスは、美しい男だったらしい。それは大衆にとって、新しい時代の明るい象徴ともなったであろう。
写真にあるラビカナ街道のアウグストゥスは犠牲者を祈っている彼の像である。彼が、為政者というだけでなく、宗教的な指導者でもあったと思われる像である。そして背景を知らなくても、本当に美しい像であった。





