映画の始まりは、主人公グレース(ライアン・ゴズリング)が宇宙船で目覚めるところからだ。なぜここにいるのか、そして目的は何なのかは、彼の記憶と行き来しながら、状況が掴めてくる。一緒に宇宙に飛び立ったのは、グレースを含めて3人。生き延びたのはグレースだけだった。
彼は中学校で科学を教える教師だが、元々は科学者だった。研究者だった時の論文から国家的なプロジェクトである「地球を救う」メンバーに期せずして加えられ、そして本来の好奇心や研究を突き詰めていく姿勢なども含め、本人が望んでいるという訳ではないのに重要なメンバーとしてプロジェクトが進んでいく。それを仕切るのが、エヴァ・ストラットだ。常に冷静でそして強引なリーダーである。
太陽の熱量がなぜだか少なくなって、このまま進むと30年もすれば地球の温度が10〜15度くらい低下し、それに伴って人口の少なくとも4分の1は減ってしまうという。アストロファージという未知の物体が原因のようだ。地球をどうやって救うのかという一大プロジェクトが動き出す。
そんな大きなプロジェクトに、なんで俺が選ばれちゃったの?的な状況が重なりグレースは時々おたおたするのだが、地球を救うために飛ばされるヘイル・メアリー号の出発の準備に加わっている。燃料はアストロファージだ。この特性を生かした設計で、かつ片道だけの燃料を積んで3名の飛行士が乗り込むのだ。しかし出発直前で、予定していた科学者が事故で死亡したために、グレースは強制的に宇宙船に乗せられ、そして目覚めたときにはひとりだった。
セリフが少なく説明も少ない中、映像で見せていく進行は、なかなか見応えがある。一方で地球を救おうとして飛び立ったのはヘイル・メアリーだけではなかった。異星からもその謎を解き解決するため宇宙に飛び立っていた飛行船と遭遇する。そして、異星人とのファーストコンタクト、これは、もうドキドキするしかない。そしてまさかの異星人の形態。
諦めない、信じあう、助け合う、誰かのためは自分のためにも繋がる、など言葉にすると躊躇しそうなことばかりなのだが、この映画の世界で起こっていることはそんな言葉がふさわしい。そして、異星人とのコミュニケーションにしても、文化や思考の違いを受け入れるとか、どうやったら通じることができるか、などを素直に受け止められる物語だ。
ストラット役のザンドラ・ヒューラーは、『関心領域』では重要な役割を演じ、『落下の解剖学』では主演を務めている、このところ存在感のある女優だ。そして、ストラッドが映画の中盤に歌うハリー・スタイルズの「Sign of the Times」、これがまた本当に良い。
また、グレースが出会った異星人ロッキーと培っていく関係やロッキーのキャラクターなど、もう好きとしか言いようがないんだけど、岩みたいな形状が見慣れてくると本当に可愛く見えてくるから不思議なものだ。
原作を読むのもお勧めだ。読んでから観るか、観てから読むかは、何とも言えなくて私は読んでから観たので、「おお、そうきたか」「ふむふむ」という感じの楽しみ方だったのだが、何も情報がないまま観るのも楽しめるだろうなあという気持ちにもなった。ヒット作でまだ上映は続いているので映画館で観るのをお勧めしたい。
2026.4.29(M)






