だいたい吉祥寺に住まう

ゆるく楽しく、
都市住まいをする大人のために

2026.06.12 更新

サンキュー・チャック(2024)

世界の終わりが訪れようとしているある時のこと。地震や津波が各地で起こり、ネットは通じない、道路も寸断されていて、人々は絶望感と共に自分を見つめ直している中で、チャールズ・クランツという見知らぬ人の広告が街中に現れている。誰だ、この通称チャックという人物は?と登場人物たちは、世界の終わりを感じる日々の中で不思議なこの広告に疑問を持つようになる。

物語は、一方でチャックの生い立ちを見せてくれる。幼くして事故で両親を亡くし、祖父母に育てられたチャックは、祖母とキッチンで踊りを楽しみ、ハイスクールではダンスを練習する。会計士の祖父には、数字について哲学的な示唆を与えられ、そんな家庭で育っていく。
祖父母宅には謎の部屋があり、そこには入ることを禁じられていた。それも祖父母がこの世にいなくなってからはチャックが受け止めることになった。それの意味するものは観る側に委ねられる。

世界の終わりに「サンキュー・チャック」の広告が示唆するものは、観客がそれぞれ読み解くしかない。

スティーブン・キング原作の見応えのある映画は、ホラー以外にも『ショーシャンクの空に』や『グリーンマイル』など数多くあるが、本作は今の時代の空気と妙にしっくりくる、不安と幸福感が入り混じる大人の映画である。

チャックのハイスクールで年上の女子学生と踊るシーンと、大人になってから街角のドラムに合わせて踊るシーンだけでも、この映画を観る価値は十分だ。チャック役のトム・ヒドルストンにすっかり魅了されるはずである。
日本では2026年5月に公開され、今も上映中だ。

2026.6.10(M)

星評価 4.0
地中海世界の歴史8