だいたい吉祥寺に住まう

ゆるく楽しく、
都市住まいをする大人のために

2026.08.18 更新

南極料理人(2009)

南極の中でも過酷な場所にあるドームふじ基地は、ペンギンもアザラシも寒すぎて住めないような所だ。そこに研究者や技術者、医師などに加わって海上保安庁から出向した西村(堺雅人)が調理担当として加わり、総勢8人の男性が1年以上もの期間を共に過ごすことになる。

外は極寒で氷の世界だ。建物内は、個別の小さな部屋以外は、共同のトイレさえ仕切りがほぼないような住環境だ。風呂はなく、簡易的なシャワーが設置されている。仕事の時間以外は食堂や医務室兼娯楽室のようなスペースで一緒に過ごす日々である。基地への連絡はファックスで送られてくる。1分700円以上する電話は高額になるのでなかなか使えない。インターネットなんてない。
そんな中で、楽しみになるのは、食である。それを担当するのが西村で、8人分の食事を毎食準備する。食材はあらかじめ運び込まれたもので、新規に購入する選択肢はない。生の野菜は手に入らないので、かいわれ大根やもやしなどを厨房で育てている。
ここの生活で大事なものに「水」がある。周りは氷だらけだが、水があるわけではないので、氷を切り出し基地まで運び、生活用水として確保する。これは全員で行う大事な仕事のひとつでもある。水をやたらと使うことは御法度だ。

西村は、ここでの食の大事さを十分理解し、みんなが満足できるメニューや栄養バランスなどを考えた食事を提供していく。時には誕生日のイベントや季節のイベントなどに合わせて、本格的な料理を作る時もあった。それが自分を支え、かつ仲間たちを支えることも良くわかっているのだ。

仕事とはいえ閉塞された自由の少ない空間で、1年以上も暮らすとなるとそれぞれが精神的に追い込まれていく。大人なので、どこかうまくバランスを取っているが、何かの拍子にそのバランスが崩れた時には、大きなダメージがある。例えば気象庁から派遣された隊長(きたろう)はラーメン好き。夜な夜なこっそりと備蓄のインスタントラーメンを食べていたが、その在庫が切れたと知り絶望して何とかラーメンを作って欲しいと西村に懇願する。その他にも、小さなストレスにみんながだんだん耐えられなくなっていき、諍いも起こりやすくなる。しかし逃げ場があるわけではないから、うまく折り合いを付けて、この期間を乗り切るしかないのだった。

人は誰かと支え合ったり、何か目標を持ったりしないと頑張れないよなあとか、口では邪魔そうに言っていても離れて赴任している夫への愛情とか、小さなピースが散りばめられている。
安心して観ることができるのは大きな事件は起こらない。    とにかく美味しそうなものが沢山登場する作品だ。

この映画、2026年11月に4Kリマスターが全国で公開されるそうだ。話題のドラマである堺雅人主演のVIVANTの第2シーズンも始まり、盛り上がっている時期に本作を映画館のスクリーンで観るのは楽しいだろうなあ。

2026.8.17(M)

星評価 4.0
地中海世界の歴史8