だいたい吉祥寺に住まう

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2026.10.06 更新

モネと時間旅行(2025)

突然集められた会ったこともない親族たち30名以上の中から、選ばれた4人。パリから遠いノルマンディーの不便な場所にある、土地と古い家の相続についての話が進んでいく。
それと平行に、19世紀にノルマンディーからパリへ母に会いに向かったアデルの物語が絡み合う。
相続の調査を任された4人は、自分の悩みや生活を抱えつつも、古い家から出てくる写真や手紙、絵などを彼らなりに分析しながら、この不思議な縁に夢中になっていく。どうやら家にあった絵は、著名な印象派の作品かもしれない。写真は著名な写真家が撮影したもののようだ。自分たちの先祖は一体どんな人だったのだろうと、片田舎の古い家から興奮が生まれてくる。

4人の中で一番若いセブは、映像の仕事をしながら、どこか満たされていない。流行に敏感な仕事と自分の素直な気持ちが少し乖離しているかのようだ。パリの有名な美術館で美しいモデルを撮影したり、そんな彼女と付き合っていてもどうも本心とは違うような気持ちを隠している。しかし、パリから少しの時間離れて、通常とは違う空間や人たちと行動し、自分にとって一番の理解者である同居している祖父との会話などから、自分に向き合うことができ、何を望んでいるのかも見えていく。

時代は遡って、アデルの出会いと行動力は自分の出生についても解き明かしていく。母から自分の父が誰だったのかを思い出の品と共に受け取り、それを頼りに父に会いに行き大切な時間を共有するのだった。

物語の面白さもさる事ながら、19世紀の旅の様子や、パリの街中、モンマルトルの雰囲気もこんな感じだったのだろうなと想像できるし、現在のパリの風景、特にオランジェリー美術館、オルセー美術館などはパリ好きには嬉しい映像が散りばめられている。

そしてパリで母と過ごす時間から自分のアイデンティティを確認して、ノルマンディに戻ったアデルは、きっと心豊かに、ぶれることなく自分の一生を過ごしたことだろう。

美術好きやパリ好きはもちろんお勧めしたい。そして現代の「個」を重視している都会人が、血縁と向き合うことで気づく、ひとりで自分が形成されてきたわけではないという、実は都市部で忘れがちになっている普通の感覚も思い出させてくれた。
幸せを感じる映画である。

2026.10.1(M)

星評価 3.9
地中海世界の歴史8