だいたい吉祥寺に住まう

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2026.04.30 更新

PRIZE―プライズ―

PRIZE―プライズ― 村上由佳 著 

村山由佳 著

文藝春秋 2025

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登場人物の感情が激しい小説である。主人公の作家、天羽カインは売れっ子で本屋大賞も受賞したことがあるが、喉から手が出るほど欲しいのは直木賞だ。すでに2回候補に上がり、今度こそと思いながら魂を込めて執筆を続けている。
それを取り巻く編集者たちは、天羽のご機嫌を伺いながらも、ちょっとしたタイミングで人格が変わるほどに、怒りで詰め寄るような彼女をもてあましているようだ。

本作は、直木賞が欲しくて仕方のない作家と、その編集者たちの心情、そして中でも天羽に心酔している編集者との、まるで蜜月とも言える関係から編集者のラインを超えてしまうまで突き詰めていく真剣勝負が繰り広げられる物語だ。
直木賞の選考会で司会を務める編集者に、何かしら心遣いができないのかと問いただす作家・天羽や、学生の頃から天羽の作品が好きで社会人となり天羽の担当となったことを至福としてまるで自分を捧げるように仕事に取り組む編集者。それを遠巻きに見ながらも、バランスよく組織を動かしている上層部の人々。

芥川賞や直木賞は、それほど読書に興味を示していない人々にも「受賞作だから読むか」というきっかけになることは確かだと感じる。でも、ここまで熾烈な感情で作家たちは欲しがっているのだろうか、たぶん欲しい作家は多いのだろうなあ。そして、受賞することでその先はずっと「直木賞作家」「芥川賞作家」という看板が付くことは間違い無いので、こんな強烈な激風のような感情が渦巻くこともあるんだろうなあ。直木賞の選考もこれは胃に穴が開きそうな仕事かもしれない。

作家は怖いなあと思いつつ、編集者という仕事も体を壊しそうだなあと思いながらページがどんどん進むのであった。天羽カインは好きだが怖い怖い、だけど面白い作品だった。2026年本屋大賞3位の作品でもある。

2026.4.29(M)

星評価 4.0
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