自分とそっくりの見知らぬ遺体が目の前に現れたら、その後はどんな行動を取るのだろうか。見なかった振りはできない。その遺体が全くの他人である証拠を探そうとするだろうか。
救急医をしている医師が対峙したのは、まるで自分のような遺体だった。
ここまで似ているというのは、他人の空似などと呑気な考えで落ち着くわけがない。
自分のルーツを探すことになった主人公の医師・武田だったが、思いも寄らぬ繋がりが広がっていく。家族とは、血縁とは、どう捉えていけば良いのか。信じていたアイデンティティとどう向き合うのか。
そしてタイトルになっている「禁忌」とは何を指すのか、そんなに重い言葉が武田に相応しいのか、それはまさかの結末までわからない。
実際に医師をしている作者のデビュー作で、この年の本屋大賞にもエントリーされた人気作である。医師の視点からのリアリティを感じる細部の表現に大きな自信も感じながら、安心してドキドキ読み進められる作品だ。
二作目の『白魔の檻』も面白い。今後も追いかけたい作家である。
2026.5.29(M)






