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ひとり読書会

2024.06.11 更新

カーテンコール

筒井康隆著
新潮社 2023

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2023年の秋に本書が出版されるとき、作者自身から、これが最後の作品集になるだろうというメッセージが出た。それを読んできっと最後の作品集にはならないだろうが、買って読まねばと考えた人は数多くいただろう。私もお久しぶりに筒井康隆氏の本を買ったひとりだ。

2021年から2023年9月までに雑誌等に掲載された25篇。
「花魁櫛」は、物もお金も恐ろしい。
「お時さん」は、まるで狐か狸に化かされたような話だが、妙にしみじみする。
「川のほとり」は、食道癌で他界したご子息が登場する。夢の中で息子と再会し夢だと理解しつつ喋っている間は消えないだろうと夢中で喋るというのが切ない。どれだけ悲しいのか、こんな表現もあるのだな。
表題にもなっている「カーテンコール」は、登場人物の多さと会話に笑うしかない。

筒井康隆氏の作品をしっかり読んだことがない人でも『時をかける少女』は映画やアニメで観たことがある人も多いはずだ。幅広い層が知っている作品を輩出している大御所である。
しかし私が出版時とリアルタイムに近い状態で読んだ筒井作品はクレイジーに感じるものが多かった。もう何十年も前、読書に没頭していた時期、文庫や単行本を買って数多くの筒井作品を読んだ。『俗物図鑑』『農協月へ行く』『おれに関する噂』『脱走と追跡のサンバ』『虚人たち』、七瀬三部作はもちろん、その他にも沢山の筒井作品を読んできた。こんな世界も小説になるんだという中毒性のある読書体験だった。
その後筒井氏の作品とはしばらくご無沙汰していたが、この間に私は普通の良識を持った大人になっており、久しぶりの筒井作品を今でも楽しめる心を持っているか不安な気持ちもあった。しかし『カーテンコール』を読んだ後は、もう大丈夫。あの時、貪るように読んでいた筒井作品を再度読み直せると妙な自信が芽生えた。
筒井さんが断筆宣言をしたのはいつだったか調べてみたら、もう30年以上前なのか。いやはや。まだまだご執筆を続けていただけることを願うひとりがここにもいる。

2024.6.10(M)

星評価 3.8