最近でこそあまり食べなくなってしまったが、かつては“またか⋯⋯”とガッカリするほど日常的だった汁物で「さんぺじる」と呼ぶ浜メニューがあった。寒さが厳しくなると、不図、その味が思い出される。
浜処では、北海道旅行者向けにあちこちで出されているようだが、決して高級料理ではない。我ヶ家が貧しかった頃、手早く仕事を切り上げた母が、裁割した鱈の頭に、大根、人参、馬鈴薯、葱などの有り合わせを入れて煮立てた塩汁で、汁椀ではなく、具材が一面に広がった深皿に容れて出すのがお決まりだった。具材は鱈の他に鮭でも助宗鱈など何でも善く、あのグロテスクなカジカの頭さえ入っていた。
ただ忘れ難いのは、具の入った汁皿の汁が澄んでいて、皿の青い絵柄や地模様が鮮やかに見えることだった。その魚本来の味わいが深く溶けこんでいるものの、その時代、夕食に三平汁が出るときは、他に取り合わせて出るおかずは漬物以外に何も無いのが当たり前で。いかにも貧し気だったのだ。
母が亡くなって既に八年、今晩あたり、鱈の頭、割ってみるか。
高田則雄

鱈(たら)の三平汁




