だいたい吉祥寺に住まう

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2026.07.16 更新

熊に出会う

山に行かなくなって何年にもなる。かつては時季になると、ミツバだ、コクワだ、マツタケだと年中山に入っていたのだが、近年、齢のせいもあってか、山から遠のいてしまっていた。それが最近、新聞やテレビで“熊、出現!!”のニュースを眼にすることが多くなって、改めて山で何度か彼等に出遭っていたことを思い出した。
出遭うのは不思議と帰り途で、単独のときもあれば、親子連れのときもある。初めてのとき、一瞬立ちすくんで、体が硬直したまま途方に昏れていた記憶もある。
それがいつからか、“ああ熊だな……”と思うだけで、歩みが停まることも無くなっていた。こちらが彼に気づいているのだから、彼のほうがもっと先に私に気づいているはず、吠えてもこないのは私に何の危険も感じていない証拠だろう。“ああアイツか”程度の、普通の山の生き物と私を見てくれているに違いない。係わり合わないのが、自ずと身についた山の習性なのだ。
ある朝、玄関前の通路に泥の足跡があった。近所も集ってきて、そのうち警察官や鉄砲撃ちさえやってきた。熊の足跡だったのである。裏の河口泥地に生えた蕗の群生を食べた痕跡はすぐに見つかった。
その彼が来た道を戻らず、家並を抜け、線路を越え、国道を横切って山へ戻ったのが見て取れた。幾人もの人間に出遭う可能性にも気づいていただろう。へぇー!?と思ったものの、私自身が山で彼等に出遭ってる慣れもあってか、この出来事の身近すぎに気が行ってしまっていて、そこの危険を考えることも無かった。そんなこともあったのである。

高田則雄

北海道の道路を横切るクマ

地中海世界の歴史8