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2026.09.16 更新

もちぱりライスペーパー

 最近、ライスペーパーにはまっている。

 生春巻きはまだ作っていない。なんでだ、ライスペーパーで作るものの筆頭なのに。キュウリとかを細く刻むのが面倒だし、なんかオシャレなイメージだからだろうか⋯⋯。自宅で一人、オシャレなものをつまんでも、若干のむなしさがある。私はガツンと行きたいのだ。

 というわけで、ライスペーパーを使ってお好み焼きを作る。油を軽く引いたフライパンにライスペーパーを置き、卵を割って適当に溶く。そのうえにキャベツの千切り(すでに切ってあるものをスーパーで買ってきた)、豚肉を乗せ、蓋をして蒸し焼きに。途中でひっくり返し(全部のうえに、もう一枚ライスペーパーを載っけて、サンドしてもいい)、じっくり焼く。お好み焼きソースとマヨネーズをかければ、はいできあがり。

 ライスペーパーのもちぱり(もちもちぱりぱり)食感が心地いいし、キャベツの甘みがダイレクトに感じられる。小麦粉を使わないから、流行りのグルテンフリーでヘルシー。⋯⋯いま念のため、ライスペーパーのカロリーを調べてみたら、それなりにあった。まあ、ライスだもんな。グルテンフリーではあるが、期待したほどのダイエット効果はなさそうな、ライスペーパーお好み焼きだ。

 ほかにも、エビと鶏肉と豆腐とエノキのシウマイふう(切ったライスペーパーをかぶせる)、合いびき肉とニラとエノキをナスで挟み焼きしたもの(ライスペーパーでくるむことで、型崩れを防ぐ)、卵とエノキのスープ(切ったライスペーパーを入れ、ワンタンのかわりにする)など、思いつくままに作っては、うまうまと味わっている。それにしても私は、どんな料理もエノキでかさ増ししようとしすぎだ。エノキのしゃきっとした食感と旨味、たまらんものがありますよね。

 しまいには、ハンバーグもライスペーパーで包んでしまった(むろん、刻んだエノキも肉のなかに混ぜてある)。我ながら、「いや、ハンバーグは包まなくていいだろ」と思ったが、肉汁を多少は閉じこめる役に立ったかもしれない。ひっくり返すときにライスペーパーが破けてしまったので、大半の肉汁はこぼれでたが。

 私はなぜ、ライスペーパーに心惹かれるのか。まず、磨りガラスみたいな見た目がいい。窓に向けてかざすと、光をやわらかく通す。米でできているものとは思えない。というか、食べものとは思えない。

 ところが水に浸すと、あーら不思議。透明度を増し、トゥルトゥルの感触になって、いろんな具材を優しく包みこんでくれる。風変わりな繊維のミニ風呂敷を扱っている感じもあるし、料理の工程にちょっと工作感が出て、胸が躍る。つぎは、細く切ったライスペーパーで三つ編みみたいな形状を作り、軽く揚げて、塩でも振って食べてみようかなあと思っている。うまく編めるものなのかわからないが、チャレンジしてみよう。

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著者:三浦しをん(みうら・しをん)氏

1976年、東京生まれ。
2000年『格闘する者に○(まる)』でデビュー。
2006年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞、2012年『舟を編む』で本屋大賞、2015年『あの家に暮らす四人の女』で織田作之助賞、2018年『ののはな通信』で島清恋愛文学賞、2019年に河合隼雄物語賞、2019年『愛なき世界』で日本植物学会賞特別賞を受賞。
そのほかの小説に『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『天国旅行』『墨のゆらめき』『ゆびさきに魔法』など、エッセイ集に『乙女なげやり』『しんがりで寝ています』『好きになってしまいました。』など、多数の著書がある。最新作は『夜の恩寵』。

撮影 松蔭浩之

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