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2026.09.16 更新

もちぱりライスペーパー[2]

 これも最近気づいたのだが、私はどうやら、籐編みとか竹細工とかが好きらしいのだ。お土産屋さんなどで見かけると、「どうやって作るんだろう」と、じっと眺め入ってしまう。ストローの袋があると、無意識のうちにねじって丸めて小さな輪っか状にし、「指輪ができた」とご満悦だ。手もとにティッシュがあったら、細く割いて何本もの「こより」にし、編むというか織るというかして、ミサンガ的ななにかをこさえている。すべて、すぐに捨てるのだが、ちまちまと手を動かしているあいだは至福を感じる。

 この勢いで、いつかは竹細工体験をしてみたいなと思っているのだが、そのまえに、「そうだ、ライスペーパーだ!」と気づいたのである。今度はハンバーグに、細く切ったライスペーパーを網目状にかぶせてみようかしら⋯⋯。網脂ハンバーグのライスペーパー版みたいに。そんなことをしてなんの意味があるのかわからないが(脂じゃないのに)、想像しただけで興奮してくる。私は料理がしたいのではなく、工作がしたいのかもしれない。

 とりあえず心を落ち着けるため、トルティーヤのかわりにライスペーパーを使って、タコスふうのなにかを作った。おお、これもまた、もちぱりでおいしい。グルテンフリー(でもカロリーはそれなり)。

 しかしライスペーパーは、わりとおなかがすく。そのため私は、朝にライスペーパーお好み焼きを食べたのち、昼には巻き寿司を食べたり(スーパーで買ってきた)、夕飯のライスペーパーエビシウマイをおかずに、ご飯をもりもり食べたりしている。明らかに「ライス」を摂取しすぎだ。

 この状態がいいとはとても思えない。早急に「概念としてのライスペーパー」で満足する必要がある。つまり、ライスペーパーを活用するのはやめにし、お好み焼きはキャベツの千切りと豚肉の蒸し物にする、エビシウマイも具の部分だけ、合いびき肉をナスで挟んだら、もうそれでよしとする、といった仕様に変更だ。

 なにも織ったり編んだり包んだり出来ない料理なんて、味気ない。私は未練がましく、ライスペーパーの袋を覗きこむ。まだ三枚残っている。ようし、これを使って、最後にギョウザふうのなにかを作ってみるか。もちろんエノキも混ぜこむつもりだ。待てよ、ライスペーパーを切って使うにしても、ギョウザだと枚数がたりないかもしれないぞ。新たなライスペーパーを買ってこよう。

 エンドレス・ライスペーパー地獄。グルテンフリー(でもカロリーはそれなり)。

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著者:三浦しをん(みうら・しをん)氏

1976年、東京生まれ。
2000年『格闘する者に○(まる)』でデビュー。
2006年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞、2012年『舟を編む』で本屋大賞、2015年『あの家に暮らす四人の女』で織田作之助賞、2018年『ののはな通信』で島清恋愛文学賞、2019年に河合隼雄物語賞、2019年『愛なき世界』で日本植物学会賞特別賞を受賞。
そのほかの小説に『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『天国旅行』『墨のゆらめき』『ゆびさきに魔法』など、エッセイ集に『乙女なげやり』『しんがりで寝ています』『好きになってしまいました。』など、多数の著書がある。最新作は『夜の恩寵』。

撮影 松蔭浩之

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