だいたい吉祥寺に住まう

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2026.08.18 更新

天変地異こそがこれからの常態なのだろうか?

 暦の上では、8月7日の立秋が過ぎました。しかし近年では、だれも秋が来たとも、秋が近いとも思わないほど、今年も、クソ暑いと言いたくなるような日々が続いています。それも日本各地だけでなく、アジアやヨーロッパ、北米大陸を問わず、夏の北半球は絶望的に暑い、というのが現実ですね。暑いのが苦手、特に蒸し暑いのがまるでダメな私にとっては、地獄に行く予行演習をさせられているみたい、と言いたくなるほどの日々です。

 酷暑と言うか、異常な高温を経験しているのはヨーロッパ大陸各地の方が日本以上のようで、摂氏40度超はもちろん50度にもなろうかという日々が続くことになると、日陰を選んでなどと言うだけでは済まない状態です。私も20世紀の最後の時期に、スペインなどイベリア半島を夏に訪ねた際に、街中で見た電光掲示板の温度表示が40度を超えて50度に達しているのを見て、これ壊れているんじゃないの、と思ったことがありました。その時には、乾燥しているので日陰を選びながら水分補給に気をつけて歩く、ということを心がけましたが、まだ私自身体力にも自信があったせいか、カフェで、ビールをソーダで割った「セルベーサ コン カッセーラ」を「なんて美味いんだ」といいながら楽しんだ思い出が残っています。しかしどうやらそれは、高温化の先駆け的出現だったのかもしれません。いまでは、ビールどころの話ではない状況ですね。

 ビールどころの話でなかった経験は、やはり20世紀終わりの時期に、シリアのダマスクスやパルミラ、アレッポなどを訪ねた際の、やはり私にとっては地獄のような暑さの体験ですが、これについては以前にも簡単に書いたところです。なにせ、1リットル半の水のペットボトルを持って出たら、冷やしてあったその水はあっという間に「ぬる湯」になっていた、という状態でしたから、こりゃ日が傾くまでは博物館などの石造りの建物の中でなければダメだ、という強烈な日差しでした。

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 この夏は、西アジアや地中海、アフリカに行くまでもなく、しかもヨーロッパ内の南部だけでなく、ドイツや北欧でも、とんでもない酷暑と水不足が、これまでの常識を超絶した現象を各地に引き起こしていることが、報道で伝わっています。ドナウ川もライン川も渇水で舟運は不可能になり、川水を利用している原発も停止を余儀なくされたり、農業用水の枯渇や上水道の不足すら生じている地域もあるようです。中世以来、いや場所によっては古代ローマの時代以来ですが、平原の広がるヨーロッパでは水運や河川水の活用は、さまざまな形で社会活動を支えてきたものでした。時代が進むほどに運河の設置と合わせ、水運はより重要性を増してきたもので、現代でも、大量な、しかも重量のある物資を運ぶこともできる、河川や運河を用いた水運は、環境保全のためにも重視され、活用されてきたものでした。それが不可能になるとすると、トラック輸送での代替以外にはないのでしょうが、それではクリアすべき課題が多いことは、素人でも思い浮かぶというものです。

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著者:福井憲彦(ふくい・のりひこ)氏

学習院大学名誉教授 公益財団法人日仏会館名誉理事長

1946年、東京生まれ。
専門は、フランスを中心とした西洋近現代史。
著作に『ヨーロッパ近代の社会史ー工業化と国民形成』『歴史学入門』『興亡の世界史13 近代ヨーロッパの覇権』『近代ヨーロッパ史―世界を変えた19世紀』『教養としての「フランス史」の読み方』『物語 パリの歴史』ほか編著書や訳書など多数。

地中海世界の歴史8