ヨーロッパの地中海沿いの各地では、このところ夏になると山火事が、自然発火か失火か、あるいは放火という犯罪行為か、いずれにせよ悪い話題となることが続いていますが(かつては、そんなことは稀だったのですが)、今年の7月の猛暑に伴って、スペインではバレンシア地方から首都マドリード近くでも、ポルトガルの山手でも、そしてフランス南西部のボルドー近くでも、大規模な森林火災などが生じて、多くの人たちが家を離れて避難せざるを得ないという、戦争以外では経験したこともないようなことが起こりました。8月に入るころには火災は、いったんは鎮圧されたようですが、また後半に入って各地で再発しています。被災された人たちにとっては、とんでもないことになっていますし、社会全体にとっても深刻な事態と言わなくてはなりません。
大規模な火災は、カナダでも、アメリカ合衆国北部や南部でも、各地で猛威を振るって人々の生活だけでなく、環境条件にも長く続くであろう負荷を残しています。
工業化以降の、環境に大きな負荷をかけてきた人間活動、それも生産活動だけでなく、人間も環境も殺してしまう愚かな戦争という破壊行為を含めて、人為による「温暖化」現象が、もはや「灼熱化」と言うべき危機状態を招いている、というのは、否定し難い現実になってきているようです。テクノロジーはますます発展して、人はそれを利便性という名で正当化するのですが、たとえばAIの発明開発と利用が、膨大な電力や冷却水の使用を余儀なくさせているという状況は、なんだか手塚治虫さんが鉄腕アトム以来、問題提起し続けていた、コンピュータが最高権力をもった支配者であるかのように機能し始めて人の世界を左右する、という暗黒状況の始まりを示唆しているようでもあります。しかもそれを、当事者たちは無自覚で突き進んで戻れない、という。
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そんなことを思っていたら、今度はまた熊本で、10年前と同様に断層が引き起こしたという大震災が人々を苦しめる状況がもたらされてしまいました。被災された方たちへの支援や連帯の動きを迅速に進めることが、何より最優先ですが、日本は、列島のどこでも震災は起こる可能性がありますし、火山も噴火の可能性がありますから、地震に対する予知を含めた研究の前進や、震災後の対応のあり方についての振り返りといった点は、もっと本格的に進める必要があるようにも思えます。とくに現政府の動きは遅すぎますし、何かアリバイ作りの行動すらあるみたいで、何やっているんだと、イライラさせられますが、皆さんはどう感じておられるでしょうか。
さらに根本的な課題として、最近の太平洋域全体での、フィリピン初め各地での大小さまざまな地震の発生、そしてやはり各地で生じているような火山の爆発などの状況を見ていますと、いわゆる太平洋プレートの動きが激しくなって、地下はるかのマントル層の動きとか、地球が物理的な動きを強めているのではないか、と想像されるのです。素人ながら、地球という宇宙でもおそらく稀な物理的条件を持った生命の故郷が、なにかこれまでにないような、天変地異をもたらすような動きを強める時期に入っているということはないのだろうか、と。これは地球物理の専門研究者たちに頑張って研究を進化させてもらわなければならない話ですが、そんなこんなを素人なりに思わざるを得ない酷暑の夏です。
著者:福井憲彦(ふくい・のりひこ)氏
学習院大学名誉教授 公益財団法人日仏会館名誉理事長
1946年、東京生まれ。
専門は、フランスを中心とした西洋近現代史。
著作に『ヨーロッパ近代の社会史ー工業化と国民形成』『歴史学入門』『興亡の世界史13 近代ヨーロッパの覇権』『近代ヨーロッパ史―世界を変えた19世紀』『教養としての「フランス史」の読み方』『物語 パリの歴史』ほか編著書や訳書など多数。





